Dearest My Lady
央の実家は月城グループという財閥系企業。その中核はホスピタリティ業で、国内外のホテルやリゾート、ブライダル、レストラン運営などを手がける。いずれも「お客様を迎える」という理念のもと運営されており、常に洗練さと責任を求められる世界。
そんな家の御曹司でありながら、彼はこの病院にもごく自然に足を運ぶ。
本来なら雲の上の存在であるはずの央が、幼馴染だからという理由でこうして愛犬の主治医を任せ、気さくに話しかけてくれる。男性不信の紬も、唯一央の前だけでは肩の力を抜き、自然体でいられた。
「そっか……なんだか、ますます凄い人になっちゃうね」
「……どういう意味?」
「だって、あの月城財閥の御曹司だよ?私みたいな一般人がこうして自然に接してもらえるなんて、普通じゃないなって……」
昔は当然のように感じていた距離の近さが、大人になった今では少し切なく響く。無邪気で身近だった男の子が、今では立派な大人になり、背中に背負うものの大きさに圧倒される──そのことを思うと、胸がぎゅっと締め付けられた。
「何も変わらないよ」
央は言葉に力を込め、瞳を紬の目にしっかりと合わせた。
「紬ちゃんには俺が変わったように見えるかもしれないけど、これからだって、俺は紬ちゃんのそばにいる」