Dearest My Lady
「まず、期間限定でホテルの空きフロアを“保護動物ステイ拠点”に改装する。宿泊客や地域の人が気軽に触れ合えたり、簡易の譲渡会に参加できるスペースにするんだ」
ページをめくるたび、紬には見たことのない景色が開かれていくようだった。
白を基調としたホテルの一角に、柔らかな陽だまり。気まぐれにしっぽを揺らす猫。尻尾を振りながら駆け回る小型犬。興味津々に手を伸ばす子どもたちの笑顔。
そのひとつひとつが、未来をほんの少しずつ変えていく光景として胸に広がり、紬の心は静かに熱を帯びた。
「動物たちの健康チェックやケアは、専門の獣医に依頼する予定なんだけど——」
央はそこで一度言葉を区切り、紬の方へまっすぐ視線を向けた。
「そのスタートアップ……いわば“先行モデル”として、紬ちゃんに携わってもらいたいと思ってる」
心臓がひとつ、深く跳ねる。紬はゆっくりと央を見返し、短く、しかしはっきりと頷いた。
央はその反応を確認してから、穏やかに続ける。
「紬ちゃんが積み重ねてきたものなら、必ず形にできると思ってる。動物たちの健康管理の基準づくりやケアの流れ、引き渡し前のチェック……そういった最初のモデルケースを、一緒に作ってほしい」
優しいけれど、きちんと責任の重みを含んだ言葉。けれどその重さには、紬を押しつぶすような圧ではなく、背中を支えてくれるあたたかさがあった。