Dearest My Lady
視察が進む中、紬がもう一度図面を確かめようとしたそのとき──
「天城先生、少しよろしいですか?」
控えめな声が背後からかかった。振り返ると、保護団体のスタッフ二人が資料を抱え、やや緊張した面持ちで立っていた。
「医療面で、いくつか相談させていただきたくて……」
「はい。もちろんです」
紬は歩み寄り、差し出されたファイルを受け取った。ページを開けば、犬猫合わせて十数頭の詳細な情報が整然と並んでいる。
「ワクチンのタイミングや、避妊去勢がまだの子の扱いについてご意見をいただければと。それから……お見合いスペースの配置についても、動物への負担がどの程度かお伺いしたくて」
紬は資料と現場を交互に見比べ、慎重に情報を拾い上げながら口を開く。
「この子、FeLV(猫白血病)の簡易検査が去年のデータのままですね。ウイルス量は変動することがあるので、イベント前に再検査しておいていただけると安心です」
「わかりました。すぐ手配します」
紬は次のページへ視線を移すと、軽く眉を寄せた。
「こちらの子は避妊手術の傷がまだ完全には落ち着いていないのではないでしょうか?無理はさせず、展示時間を短めにするか……体調次第では今回はお休みにしたほうが安全です」