Dearest My Lady
(力になれてよかった……)
胸の奥に、じんと熱いものが込み上げる。目元にかすかな熱を覚えながら、これまで抱えてきた自責や迷いが、ゆっくりと薄れていくのを感じた。
そのとき、不意にインカムが小さく震える。
『天城先生、ロビー脇の特設ブースまで来ていただけますか?取材の件で、月城事業部長がお呼びです』
「あ……はい、今向かいます」
そう返事を返し、名残惜しさを断ち切るように一度だけ振り返り、紬はその場を離れた。
指定された場所では、すでに央が数人の記者に囲まれていた。
穏やかな口調で質問に応じながら要点を簡潔にまとめ、場の空気を自然に整えている。端正な容貌と、年齢を感じさせない佇まい。柔らかな微笑の奥に宿る揺るぎない自信がその場を包み込み、そこにいる誰もが知らず知らずのうちに、彼の言葉と所作へと引き寄せられていた。
ふと、央の視線が流れてくる。紬に気づいた央はほんの一瞬だけ微笑みを送り、流れを切らさないまま話題をそっと振った。
「──今回のプログラムについては、医療監修を担当している天城先生の存在あっての企画でした」
央は取材の進行を乱すことなく、ほんの一拍だけ言葉を置いた。記者たちはマイクやペンを構えたまま、次に続く言葉を静かに待っている。
「この企画は、彼女がいなければ実現していません。保護動物の健康管理や、譲渡後を見据えた医療体制、団体との連携まで、すべて現場での経験を最大限に活かして組み上げてくれました。正直、ここまでの規模に育てられたのは、天城先生がいてくれたからこそだと思っています」