Dearest My Lady
淡々とした口調だったが、その言葉には一切の迷いがなかった。質問が落ち着きかけたところで、ひとりの記者が手を挙げる。
「月城事業部長と天城先生は、ご婚約されていると伺っています。今回の取り組みにも、その関係性が影響しているのでしょうか」
場の空気がわずかに揺れた。央は一瞬だけ間を置き、それからはっきりと言った。
「影響していない、とは言いません。ただしそれは、私情という意味ではなく──信頼という意味です」
視線を逸らさず、言葉を続ける。
「彼女は仕事の上でも、幼馴染としても、そして一人の女性としても……私にとって必要不可欠な存在です。以前、根拠のない噂や心ない言葉が広がったこともありましたが、そんなもので、彼女を信じる気持ちが揺らいだことは一度もありません」
言葉を紡ぎながら、央はわずかに肩の力を抜くように息を吐いた。
「私は、天城紬という一人の女性を心から尊敬していますし……それ以上に、愛しています。その事実を隠すつもりも、否定するつもりもありません」
静かな断言だった。
数秒の沈黙のあと、ふと央の表情がハッと変わる。公の場で口にしてしまった熱量に、恥ずかしさを覚えたような仕草だった。
「……あ…すみません、少し脱線しましたね」
そう言ってわずかに照れたように目を伏せ、頬をかく。
「つい熱くなってしまいました。えっと、話を戻します」
その一言に、記者たちの表情も和らぎ、いくつか小さな笑いが起こった。
紬はその様子を少し離れた場所から見守りながら、胸が激しく高鳴るのを感じていた。同時に、央らしくないという、微かな違和感も覚える。