妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜
* * * *
淡い黄色に白い腰壁。木製のテーブルと椅子は濃いウォルナット。花梨好みの部屋の雰囲気が、緊張していた心を落ち着かせてくれた。
窓際の壁に沿うように四人掛けのテーブル席があり、花梨が出入り口に近い席に座ろうすると、
「山之内さんは奥にどうぞ」
と北斗に奥に追いやられてしまう。
怪訝そうに北斗を見ると、彼は不敵な笑みを浮かべて花梨を見ていた。
「俺が手前にいれば、逃げ出そうとした山之内さんを止められるからね」
「そこまでしなくたって……。私、全然信用されてないのね」
ぷくっと頬を膨らませた花梨を見ながら、北斗は懐かしそうに目を細めてクスクスと笑う。
「それなら、これまでの行いを反省してくれる? 理由も言わずに避け始めるし、すれ違っても無視だし、俺の話なんて全く聞く耳を持ってくれなかったじゃないか」
彼は決して怒っている様子は見せず、拗ねたように泣き真似をして見せた。それからゆっくりと花梨の後ろに周り、椅子を引いて座るように促す。
仕方なく北斗が引いてくれた椅子に座ると、彼は自分も向かいの椅子に座った。
「そういえばお母さんの体調はどう?」
突然の問いかけに驚きつつも、「薬が効いているみたいで、今はすっかり元気に過ごしてる」と、言葉が自然に口から出た。
「入院は?」
「私が高校生の時が最後。時々ふらつくことはあるみたいだけど、前みたいに動けないってことはないの。だから私も安心して家を出られて──」
余計なことまで言いそうになって、慌てて口を塞ぐ。
「大丈夫。及川先生から聞いて知ってるから。一人暮らしを始めて、絵本も集中して書けるようになったって」
「及川先生ったら、そんなことまで話してたんだ……」
「これについては、俺がしつこく聞いたから教えてくれたんだよ。先生は悪くない」
きっぱりと言い切った姿は、高校生の時と何も変わっていないように思える。それは今日の病棟での様子を見れば、容易に想像が出来た。
淡い黄色に白い腰壁。木製のテーブルと椅子は濃いウォルナット。花梨好みの部屋の雰囲気が、緊張していた心を落ち着かせてくれた。
窓際の壁に沿うように四人掛けのテーブル席があり、花梨が出入り口に近い席に座ろうすると、
「山之内さんは奥にどうぞ」
と北斗に奥に追いやられてしまう。
怪訝そうに北斗を見ると、彼は不敵な笑みを浮かべて花梨を見ていた。
「俺が手前にいれば、逃げ出そうとした山之内さんを止められるからね」
「そこまでしなくたって……。私、全然信用されてないのね」
ぷくっと頬を膨らませた花梨を見ながら、北斗は懐かしそうに目を細めてクスクスと笑う。
「それなら、これまでの行いを反省してくれる? 理由も言わずに避け始めるし、すれ違っても無視だし、俺の話なんて全く聞く耳を持ってくれなかったじゃないか」
彼は決して怒っている様子は見せず、拗ねたように泣き真似をして見せた。それからゆっくりと花梨の後ろに周り、椅子を引いて座るように促す。
仕方なく北斗が引いてくれた椅子に座ると、彼は自分も向かいの椅子に座った。
「そういえばお母さんの体調はどう?」
突然の問いかけに驚きつつも、「薬が効いているみたいで、今はすっかり元気に過ごしてる」と、言葉が自然に口から出た。
「入院は?」
「私が高校生の時が最後。時々ふらつくことはあるみたいだけど、前みたいに動けないってことはないの。だから私も安心して家を出られて──」
余計なことまで言いそうになって、慌てて口を塞ぐ。
「大丈夫。及川先生から聞いて知ってるから。一人暮らしを始めて、絵本も集中して書けるようになったって」
「及川先生ったら、そんなことまで話してたんだ……」
「これについては、俺がしつこく聞いたから教えてくれたんだよ。先生は悪くない」
きっぱりと言い切った姿は、高校生の時と何も変わっていないように思える。それは今日の病棟での様子を見れば、容易に想像が出来た。