妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜
「あぁ、そっか。そんなつもりじゃなかったんだけど……ごめん」
「いえ……大丈夫です」
「山之内さんはね、短編小説のコンテストで受賞したこともあるくらいの実力派なんですよ。だから今書いている作品も、きっと読み応えのあるものになるんじゃないかな」
「先生!」
「へぇ……それはすごいなぁ。じゃあ、いつか読ませてもらえるのを楽しみに通わせてもらうよ」
彼が自分の作品を読む──そう考えただけで、緊張で体がこわばってしまう。しかしそんな花梨に北斗はスッと手を差し出し、
「これからよろしく、山之内さん」
と笑顔で言った。
花梨は戸惑いながらも、出された手をそのままにしておくわけにはいかず、おずおずと手を差し出した。すると北斗の方から手を握られ、その瞬間花梨の心臓が大きく跳ね上がる。
男子と手を繋ぐだなんて、一体いつぶりだろう──男の人が苦手な花梨は、なるべく男性とは関わらないようにしていたのに、それがこのタイミングで崩れ去る。
「放課後はなかなか来られないんだけど、昼休みに本を読みに来たりすると思う」
「あっ……私もそんなにたくさんは来てないの。家がちょっとバタバタしてて……だから好きな時に使ってもらって大丈夫」
「うん、そうさせてもらうよ。ありがとう」
そう笑った北斗は何故か安堵したように見え、花梨は不思議そうに首を傾げた。よく考えてみれば、ただ本を読むだけに入部するというのもおかしな気がする。
彼の笑顔の奥に、何か別の感情が隠れているような気がしたが、あまり詮索するのは良くない気がしたので、花梨は口角を少し上げて小さく笑い返した。
そんな二人の様子を、及川先生は目を細め、にこやかな表情を浮かべて見守っていた。
「いえ……大丈夫です」
「山之内さんはね、短編小説のコンテストで受賞したこともあるくらいの実力派なんですよ。だから今書いている作品も、きっと読み応えのあるものになるんじゃないかな」
「先生!」
「へぇ……それはすごいなぁ。じゃあ、いつか読ませてもらえるのを楽しみに通わせてもらうよ」
彼が自分の作品を読む──そう考えただけで、緊張で体がこわばってしまう。しかしそんな花梨に北斗はスッと手を差し出し、
「これからよろしく、山之内さん」
と笑顔で言った。
花梨は戸惑いながらも、出された手をそのままにしておくわけにはいかず、おずおずと手を差し出した。すると北斗の方から手を握られ、その瞬間花梨の心臓が大きく跳ね上がる。
男子と手を繋ぐだなんて、一体いつぶりだろう──男の人が苦手な花梨は、なるべく男性とは関わらないようにしていたのに、それがこのタイミングで崩れ去る。
「放課後はなかなか来られないんだけど、昼休みに本を読みに来たりすると思う」
「あっ……私もそんなにたくさんは来てないの。家がちょっとバタバタしてて……だから好きな時に使ってもらって大丈夫」
「うん、そうさせてもらうよ。ありがとう」
そう笑った北斗は何故か安堵したように見え、花梨は不思議そうに首を傾げた。よく考えてみれば、ただ本を読むだけに入部するというのもおかしな気がする。
彼の笑顔の奥に、何か別の感情が隠れているような気がしたが、あまり詮索するのは良くない気がしたので、花梨は口角を少し上げて小さく笑い返した。
そんな二人の様子を、及川先生は目を細め、にこやかな表情を浮かべて見守っていた。