妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜
「あはは! そうじゃないよ。例えば、自分が正しいと思っているのに周りに流されそうになった時、当たり前の言葉で俺を諭してくれるような人ってことかな」
彼の笑い声に思わず体がビクッと震えたが、花梨を見つめる瞳が優しすぎて、照れた花梨は視線を逸らす。
「そんなことないと思うけど……」
「学生時代に山之内さんの小説を読んだ時、すごく真っ直ぐな人なんだなって思ってさ、話してみたくなった。いざ話してみたら思っていた通りの人柄で、君との空間は不思議と素直で正直な自分でいられたんだ。だからあの場所と山之内さんを守りたかった──まぁ現実にはそれが出来なかったけど」
花梨は不思議そうに首を傾げた。
「私を守る……?」
「いつも頑張っているのに、弱音を全く吐かない。そんな山之内さんがリラックス出来るようにしてあげたいって思っていたんだけどね、それよりも自分の欲望の方が勝っちゃった」
それはあのキスのことだろうか──。
「じゃあ私たち……本当はずっと両思いだったの……?」
「お互いに気づいていなかっただけでね」
なんて遠回りをしてしまったんだろう。もしあの時に彼の話を聞いて、お互いに思ったことをきちんと伝えて話し合えていたら、二人の関係は変わっていただろうか──でも今更そんなことを考えても仕方のないこと。
「じゃあ俺からも質問、いい?」
「……私に答えられることなら……」
「大丈夫。簡単なことだから」
すると北斗は再び身を乗り出し、満面の笑みで花梨をじっと見つめる。
「山之内さん、今付き合ってる人っている?」
「……いないけど……」
「本当? あぁ良かった!」
それってどういう意味だろう──わだかまりが消えてまっさらになった心が、意味もわからずドキドキと高鳴り始める。
しかし北斗が口を開きかけた途端、扉をノックする音がしたと同時に、勢いよく開かれたのだ。
「失礼します。お時間になりましたので、そろそろお食事をスタートしてもよろしいでしょうか?」
先ほどの北斗の友人とは別のスラリとした若い男性が部屋には入ってきて、北斗の横に立つとそう尋ねた。
北斗は花梨の手を離してから、顔を真っ赤に染めて慌てて椅子に座り直す。
「あっ、あぁ、もうそんな時間か。お願いするよ」
「かしこまりました。ではお飲み物のメニューをお持ちしますね」
男性が外に出てから、二人は顔を見合わせてクスクス笑い始める。
「焦った」
「本当。びっくりしちゃった」
「じゃあ続きは食べながらにしよう。ここの料理、お世辞じゃなくすごく美味しいんだ」
「そうなんだ……でも、いいの?」
「もちろん。遠慮なく食事を楽しんで。今日はやっと誤解が解けた大切な日だからね」
こんな簡単に心が軽くなるなんて──ずっしりと心に重くのしかかっていた過去を、北斗の言葉でようやくおろすことができた。
窓からはオレンジと青のグラデーションが美しく揺れている。あんなに見ることが辛かった夕星に、胸が温かくなるのを感じた。
彼の笑い声に思わず体がビクッと震えたが、花梨を見つめる瞳が優しすぎて、照れた花梨は視線を逸らす。
「そんなことないと思うけど……」
「学生時代に山之内さんの小説を読んだ時、すごく真っ直ぐな人なんだなって思ってさ、話してみたくなった。いざ話してみたら思っていた通りの人柄で、君との空間は不思議と素直で正直な自分でいられたんだ。だからあの場所と山之内さんを守りたかった──まぁ現実にはそれが出来なかったけど」
花梨は不思議そうに首を傾げた。
「私を守る……?」
「いつも頑張っているのに、弱音を全く吐かない。そんな山之内さんがリラックス出来るようにしてあげたいって思っていたんだけどね、それよりも自分の欲望の方が勝っちゃった」
それはあのキスのことだろうか──。
「じゃあ私たち……本当はずっと両思いだったの……?」
「お互いに気づいていなかっただけでね」
なんて遠回りをしてしまったんだろう。もしあの時に彼の話を聞いて、お互いに思ったことをきちんと伝えて話し合えていたら、二人の関係は変わっていただろうか──でも今更そんなことを考えても仕方のないこと。
「じゃあ俺からも質問、いい?」
「……私に答えられることなら……」
「大丈夫。簡単なことだから」
すると北斗は再び身を乗り出し、満面の笑みで花梨をじっと見つめる。
「山之内さん、今付き合ってる人っている?」
「……いないけど……」
「本当? あぁ良かった!」
それってどういう意味だろう──わだかまりが消えてまっさらになった心が、意味もわからずドキドキと高鳴り始める。
しかし北斗が口を開きかけた途端、扉をノックする音がしたと同時に、勢いよく開かれたのだ。
「失礼します。お時間になりましたので、そろそろお食事をスタートしてもよろしいでしょうか?」
先ほどの北斗の友人とは別のスラリとした若い男性が部屋には入ってきて、北斗の横に立つとそう尋ねた。
北斗は花梨の手を離してから、顔を真っ赤に染めて慌てて椅子に座り直す。
「あっ、あぁ、もうそんな時間か。お願いするよ」
「かしこまりました。ではお飲み物のメニューをお持ちしますね」
男性が外に出てから、二人は顔を見合わせてクスクス笑い始める。
「焦った」
「本当。びっくりしちゃった」
「じゃあ続きは食べながらにしよう。ここの料理、お世辞じゃなくすごく美味しいんだ」
「そうなんだ……でも、いいの?」
「もちろん。遠慮なく食事を楽しんで。今日はやっと誤解が解けた大切な日だからね」
こんな簡単に心が軽くなるなんて──ずっしりと心に重くのしかかっていた過去を、北斗の言葉でようやくおろすことができた。
窓からはオレンジと青のグラデーションが美しく揺れている。あんなに見ることが辛かった夕星に、胸が温かくなるのを感じた。