妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜
* * * *
食事を終えた二人は、たくさんある本屋の中で、互いが気になった店に入っては、本を眺めたり購入したりと穏やかな時間を過ごしていた。
するとミステリー小説を多く扱う店舗で、北斗が嬉しそうに一冊の本を手に取り、花梨にその本を手渡した。
「都築のデビュー作見つけた」
それは文芸部の後輩だった都築が書いたミステリー小説で、大学在学中にとあるミステリー大賞を受賞し、デビューに至った作品だった。
「それ、私も読んだ! 最後のどんでん返しにやられたーって思ったの、今も覚えてる」
「わかるわかる。さすが都築だよな。彼らしさが作品によく表れてる気がしたよ」
「今はベストセラー作家の仲間入りだしね。元気にしてるかなぁ」
「仕事と作家の二足の草鞋は大変そうだけど、充実してるって言ってたよ」
まるで彼と友だちであるかのような話しぶりに、花梨は目を瞬いた。
「……言ってた? いつ?」
「先月飲んだ時。まだ専業作家になるには知名度が足りないってぼやいてたけど、俺からすればかなり売れっ子だと思うけどね」
花梨の知らない情報が北斗の口から語られ、呆気にとられる。
「都築くんと連絡取り合ってるの?」
「高校生の時に連絡先交換したからね。それから時々会ってるよ」
「し、知らなかった……」
「都築、なんと母校の国語教師になって、文芸部を復活させたんだ。だから今度、久しぶりに部室に行ってみないか。きっと部誌とかまだ残ってるはずだからさ」
「都築くん、教師になったの? なんか意外……人付き合いとか面倒くさそうだったのに」
「あいつも及川先生に感化された人間の一人なんじゃないかな。口にはしないけど、先生の守ってきた場所を守りたいって思ったんだと思うんだ」
「都築くんが、あの場所を守ってくれているんだ……なんか感慨深いね。是非会いたいな」
「じゃあ伝えておくよ」
もう廃部になったと思っていた──いや、彼の話から考えれば、一度は廃部になっているのだろう。それが再び文芸部として活動を始めているだなんて、信じられないくらいの喜びを覚える。
入ることすら怖くなってしまった部室だが、北斗と二人でならまた足を踏み入れることができるかもしれない。
食事を終えた二人は、たくさんある本屋の中で、互いが気になった店に入っては、本を眺めたり購入したりと穏やかな時間を過ごしていた。
するとミステリー小説を多く扱う店舗で、北斗が嬉しそうに一冊の本を手に取り、花梨にその本を手渡した。
「都築のデビュー作見つけた」
それは文芸部の後輩だった都築が書いたミステリー小説で、大学在学中にとあるミステリー大賞を受賞し、デビューに至った作品だった。
「それ、私も読んだ! 最後のどんでん返しにやられたーって思ったの、今も覚えてる」
「わかるわかる。さすが都築だよな。彼らしさが作品によく表れてる気がしたよ」
「今はベストセラー作家の仲間入りだしね。元気にしてるかなぁ」
「仕事と作家の二足の草鞋は大変そうだけど、充実してるって言ってたよ」
まるで彼と友だちであるかのような話しぶりに、花梨は目を瞬いた。
「……言ってた? いつ?」
「先月飲んだ時。まだ専業作家になるには知名度が足りないってぼやいてたけど、俺からすればかなり売れっ子だと思うけどね」
花梨の知らない情報が北斗の口から語られ、呆気にとられる。
「都築くんと連絡取り合ってるの?」
「高校生の時に連絡先交換したからね。それから時々会ってるよ」
「し、知らなかった……」
「都築、なんと母校の国語教師になって、文芸部を復活させたんだ。だから今度、久しぶりに部室に行ってみないか。きっと部誌とかまだ残ってるはずだからさ」
「都築くん、教師になったの? なんか意外……人付き合いとか面倒くさそうだったのに」
「あいつも及川先生に感化された人間の一人なんじゃないかな。口にはしないけど、先生の守ってきた場所を守りたいって思ったんだと思うんだ」
「都築くんが、あの場所を守ってくれているんだ……なんか感慨深いね。是非会いたいな」
「じゃあ伝えておくよ」
もう廃部になったと思っていた──いや、彼の話から考えれば、一度は廃部になっているのだろう。それが再び文芸部として活動を始めているだなんて、信じられないくらいの喜びを覚える。
入ることすら怖くなってしまった部室だが、北斗と二人でならまた足を踏み入れることができるかもしれない。