妖精渉る夕星に〜真摯な愛を秘めた外科医は、再会した絵本作家を逃さない〜
* * * *
ブックカフェを出ると、北斗が花梨の前に手を差し出してきた。その手見つめながら、ゴクリと唾を飲み込んだ。
今までは北斗にリードされて手を繋いでいたのに、今は自分の気持ちを試されているように感じた。
この手を取ってもいいのだろうか。こんなにすぐに彼を好きになるなんて、都合が良すぎやしないだろうか──心配と不安と期待が入り混じる中、花梨は意を決して彼の手を取った。
「やっと花梨から手を握ってくれたね」
彼の手に包まれると、くすぐったくなって体に小さく震えが走る。
「だ、だって北斗くんが手を出すから──」
そう言いかけた途端、北斗は花梨の手を引いて走り出し、細い路地に滑り込んだ。
「ちょっ……いきなり走るなんて……!」
突然のことに驚き、息を切らしながら顔を上げた花梨を北斗は壁際に追いやる。
「さっきから何か言いたげな顔をしてるのが気になってるんだけど、何かあった?」
図星だった花梨は、気まずくて視線を逸らした。
「そんな顔してない……」
「してるよ」
花梨はただ北斗への気持ちを自覚して、どうしていいのかわからなくなっているだけのこと。だがそのことに気付かれ戸惑った。
だがこの理由を伝えるということは、自分の気持ちを打ち明けることに繋がる。北斗は喜んでくれるかもしれないが、花梨は複雑な想いだった。
その時、北斗の表情から不安の色が窺え、花梨はハッとして息を飲んだ。卒業式の日に、彼を傷付けてしまった時と同じ表情だった。また彼を傷付けてしまったかもしれないと思うと、胸が苦しくなる。
そんなつもりはなくても、もう同じことを繰り返したらいけない──花梨は意を決して口を開いた。
「私ね……北斗くんと一緒にいると……すごくドキドキするの。あの時に忘れようとした感情が全く消えていなくて、北斗くんに触れるたびに逆に思い出されて……」
声が震える。恥ずかしくて、北斗の顔を真っ直ぐ見つめることが出来ない。
「花梨、お願いだから……はっきり言ってくれないか?」
「だ、だから……私は北斗くんが好き……今もずっと好きなの」
そう口にした瞬間、俯いたままの花梨の体は、北斗の腕の中へと落ちた。
「はぁ……良かった……! やっぱり無理とか言われるのかと思った」
北斗の体から力が抜けたように、へたへたとその場にしゃがみ込む。彼も相当緊張していたのかもしれない──そう思うと、花梨も安堵し、同じようにしゃがみ込んだ。
「……都合が良すぎるって思ったの。一昨日までは北斗くんを避けてきたのに、今はこんなの……」
「どうして? 俺は一刻も早く誤解を解いて、花梨を振り向かせたいって思っていたんだよ。それがこんなに早く訪れて幸せしかない。正直に言えばもっと長丁場になることを覚悟していたんだ。それでも八年ずっと待ち続けたから、どんなに時間がかかっても諦めるつもりはなかったよ」
北斗くんの言葉は、こんなにも私を温かく包み込んでくれ、彼を好きな気持ちに自信を与えてくれる──今なら、心に引っ掛かっていることを聞ける気がした。
ブックカフェを出ると、北斗が花梨の前に手を差し出してきた。その手見つめながら、ゴクリと唾を飲み込んだ。
今までは北斗にリードされて手を繋いでいたのに、今は自分の気持ちを試されているように感じた。
この手を取ってもいいのだろうか。こんなにすぐに彼を好きになるなんて、都合が良すぎやしないだろうか──心配と不安と期待が入り混じる中、花梨は意を決して彼の手を取った。
「やっと花梨から手を握ってくれたね」
彼の手に包まれると、くすぐったくなって体に小さく震えが走る。
「だ、だって北斗くんが手を出すから──」
そう言いかけた途端、北斗は花梨の手を引いて走り出し、細い路地に滑り込んだ。
「ちょっ……いきなり走るなんて……!」
突然のことに驚き、息を切らしながら顔を上げた花梨を北斗は壁際に追いやる。
「さっきから何か言いたげな顔をしてるのが気になってるんだけど、何かあった?」
図星だった花梨は、気まずくて視線を逸らした。
「そんな顔してない……」
「してるよ」
花梨はただ北斗への気持ちを自覚して、どうしていいのかわからなくなっているだけのこと。だがそのことに気付かれ戸惑った。
だがこの理由を伝えるということは、自分の気持ちを打ち明けることに繋がる。北斗は喜んでくれるかもしれないが、花梨は複雑な想いだった。
その時、北斗の表情から不安の色が窺え、花梨はハッとして息を飲んだ。卒業式の日に、彼を傷付けてしまった時と同じ表情だった。また彼を傷付けてしまったかもしれないと思うと、胸が苦しくなる。
そんなつもりはなくても、もう同じことを繰り返したらいけない──花梨は意を決して口を開いた。
「私ね……北斗くんと一緒にいると……すごくドキドキするの。あの時に忘れようとした感情が全く消えていなくて、北斗くんに触れるたびに逆に思い出されて……」
声が震える。恥ずかしくて、北斗の顔を真っ直ぐ見つめることが出来ない。
「花梨、お願いだから……はっきり言ってくれないか?」
「だ、だから……私は北斗くんが好き……今もずっと好きなの」
そう口にした瞬間、俯いたままの花梨の体は、北斗の腕の中へと落ちた。
「はぁ……良かった……! やっぱり無理とか言われるのかと思った」
北斗の体から力が抜けたように、へたへたとその場にしゃがみ込む。彼も相当緊張していたのかもしれない──そう思うと、花梨も安堵し、同じようにしゃがみ込んだ。
「……都合が良すぎるって思ったの。一昨日までは北斗くんを避けてきたのに、今はこんなの……」
「どうして? 俺は一刻も早く誤解を解いて、花梨を振り向かせたいって思っていたんだよ。それがこんなに早く訪れて幸せしかない。正直に言えばもっと長丁場になることを覚悟していたんだ。それでも八年ずっと待ち続けたから、どんなに時間がかかっても諦めるつもりはなかったよ」
北斗くんの言葉は、こんなにも私を温かく包み込んでくれ、彼を好きな気持ちに自信を与えてくれる──今なら、心に引っ掛かっていることを聞ける気がした。