あなたの1番になりたい。
「それでね、私、思わず悠真に怒っちゃったの」
「あぁ、伊吹はたまに無神経なこと言うからな」
「......」
「少しは反省して欲しいんだけどな~」
「アイツは反省という単語を知っているのか怪しい...」
「......」
私の2、3歩前を歩く2人の会話が否応なしに聞こえてくる。
うん、分かってた。
2人の共通の話題って言ったら、伊吹さんの事になるのぐらい分かってたことじゃない。
これから先も一緒に帰るんだから、いちいちこんな事で傷付くのはやめよう。
これ以上、傷付かない様に自分に言い聞かせたが
無意識に英単語を隠す赤シートを持つ手に力が入る。
「レイさんは?」
「え?」
「レイさんは文系と理系、どっちですか?」
どうやら、伊吹さんの話題が終わったらしく
いつの間にか彼女がこちらへと顔を向けていた。
「…理系」
「わ!碧と一緒なんですね!」
理系のイメージあるから そこは驚かないけど、
…結城先輩の下の名前、碧っていうんだ。
仲間内では皆、結城先輩のことを名字で呼んでたから初耳。
レイさんは碧と一緒の理系なんだって、と彼女が隣りを歩く先輩に報告するが
へぇ、と先輩は生返事をしていた。
先輩の顔は前を向いていて表情は伺えないが、絶対に「君が理系か文系かなんて興味がないよ」という表情で返事をしているはずだ。
「おかえり、みんな」
文理選択の話しをしていると、心地いい声が急にする。
「悠真っ!」
「っ、」
学校帰りなのか制服姿の伊吹さんが、溜り場であるビルに続く道で待っていた。