御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~

 帰宅後はまず洗面所でメイクを落とす。手のひらでクレンジング剤を肌になじませながら、鏡に映る自分の顔をまじまじと見る。

 基礎化粧品をプチプラで済ませている割に肌は綺麗だけれど、それ以外はあまり特徴のない、いわゆる〝薄い〟顔。美容院に行かなきゃと思いつつそのままなっている黒髪は胸の辺りまで伸び、仕事中はポニーテールにしている。

 二十代もラストイヤーだし、自分より年下の女性社員を見て『キラキラしてるなぁ』と遠い目をしてしまうこともしばしば。

 半年前に恋人と別れてからはますます美容に注ぐ体力や気力を失っている。

 メイクを落としてさっぱりとしたところで、玄関を入ってすぐの極狭キッチンに立った。

 といっても今から料理をするわけではなく、朝に作っておいたものを温め直すだけだ。

 もやしでかさ増しした生姜焼きと冷凍ご飯をレンチンして、常備しているペットボトルの野菜ジュースと一緒にテーブルに運んで、ささやかな夕食にする。

 テレビは売ってしまったので、娯楽は小さなスマホで動画を見るくらいだ。

 動画アプリの検索窓に【い】と打ち込むだけで【癒やし 動物】【癒やし 風景】【癒やし 音楽】と立て続けに予測された語句が並ぶ。

 毎日似たような動画を見ているせいだ。

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