御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
「どんだけ癒やされたいのよ……」
さすが社畜の亡霊、と自分で自分に突っ込みつつも、動画の検索はやめない。
ふと目に留まったのは、小型犬が掃除機とじゃれるかわいらしい動画。ペットを飼う余裕さえない今の私には、これくらいがちょうどいい。
しかし、飼い主が掃除機の電源を切ると、犬は一目散に飼い主に駆け寄って甘えるように『ワンッ』と鳴いた。やがてワンちゃんはお望み通りに飼い主の女性に抱っこしてもらい、たくさん撫でてもらっていた。
動画のワンちゃんにも大切な人がいて、ちゃんとかわいがられている――。
そう思ったら自分がとてつもなく寂しいヤツに思えてきてしまい、癒やされるどころか心にダメージをくらった。
その失敗を教訓にし、次は生き物が登場しない川のせせらぎ動画に変更する。
「うん、これだ」
娯楽とも言えないほどの平和すぎる動画だが、ようやく余計な思考は湧かなくなった。
こうして住む家があって、食事もちゃんとできている。それだけで幸せだと思わなくちゃね……。
ラグジュアリーな宿泊施設に勤める社員の思考としては若干間違っている気もするが、今はとにかくこの質素な暮らしを続けて仕事を頑張るしかない。
そして、余裕ができたらもう少しいい場所へ引っ越そう。
川のせせらぎに癒されたおかげか、少しは前向きな気持ちで一日を終えた。