御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
「さっきの、ベンチの話です。なんの変哲もない場所なのに覚えていたのには理由があります」
彼の口調は静かだったけれど、私を見つめる瞳が情熱的に揺らめいている気がして、頬がじわじわと熱くなってくる。
あのベンチに座って、彼が勝ってきてくれた水でのどを潤して……その後自分がなにをしたかを思い出すと、彼がなにを言おうとしているのかもなんとなく想像がついた。
衝動的に彼に触れたくなったあの欲求を、私自身まだ覚えているから。
「あのベンチのすぐそばで……美冬さんと、キスしたから」
予想していた言葉だったとはいえ、ドキンと胸が鳴った。
今にも唇が触れそうな距離で『キス』と言われて、ますます顔中に熱が集まる。
「うん……したね、キス」
「あの時、美冬さんはとくに意味がないって言いましたけど……あなたはそんな軽い気持ちで誰かにキスするような人じゃない」
黎也くんの真摯な眼差しが、私の心をまっすぐに射貫く。
この胸の高鳴りは恋だって、本当はずっと前から気づいていた。だけど、自分の気持ちに素直になることも、たったひとりの誰かを信じて心を預けることも怖くて、ずっと目を逸らしていた。
でも、黎也くんの前でなら……臆病な自分を卒業して、勇気を出せそうな気がする。