御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
「父さん? ……はい、黎也です」
あまり聞き耳を立てるのはよくないと思いつつも、相手はどうやら御門社長らしいと知り、少し気になった。
仕事の話か、家庭の話か……。私たちの付き合いもいずれ話さなければならないと思うと、今から少し緊張する。
「そんなことが……。わかりました、すぐに詳しい話を聞きに行きます」
黎也くんは冷静に話を切り上げ、スマホを耳から離す。その横顔が少し険しいものに見えたので、心配になって尋ねる。
「仕事の大事な話……?」
私の方を見た彼はこわばった表情を緩め、軽く頷く。
「ええ、そんな感じです。美冬さんのことはきちんと送ってから会社に向かうので、心配しないでくださいね」
「そっか……なんだかごめんね」
「美冬さんが謝ることじゃありませんよ。こんな時間に連絡してくる父が悪いんです」
ふざけたように言う彼の姿に一瞬ホッとしたけれど、前を向いて運転に集中し始めた彼の表情はまたしても硬くなっていて、なんとなく胸がざわめく。
社長と副社長の間で交わされる仕事の話に、私が役立てることなんてないんだけど……それでも、彼の力になりたいという気持ちだけは伝えたい。