御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~

 物音に気付いたその人物が、ゆっくりこちらを振り返る。私の全身からますます血の気が引いた。

「おお、美冬。御曹司とのデートお疲れさん」
「直樹……」

 ニヤニヤしながらこちらへ歩み寄ってきたのは、以前会社で待ち伏せされてから二週間以上見かけていなかった元カレの直樹だった。

「どうしてここに……?」

 彼に知られているのは勤務先だけだと思っていたのに、いつの間に家の場所まで知られていたんだろう。その不気味さに、肌が粟立つ。

「平日に会社から後をつけたんだ。このアパートを見る限り、お前、ホントに金ないのな」
「だから、前もそう言ったじゃない……。あなたに貸せるお金なんてはないんだから帰って」
「お前に金はないのはわかった。……だけど、婚約者にはあるだろ」
「な、なに言ってるの?」

 婚約者って……黎也くんのこと?

 そういえば、彼の素性まで教えた覚えはないのに、さっきも〝御曹司〟って――。

「こないだの様子見る限り、アイツ美冬にべた惚れだったじゃん? だから、お前がちょっと小遣いくれって言えば札束が出て来るんじゃないの?」

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