御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
相変わらず説明の足りない彼の後をついて歩きつつ、人気のない廊下を歩く。
すると突き当りに巨大な扉があり、黎也君は迷わずその両開きの取っ手を掴んだ。
ふわっと鼻先をかすめたのは、真新しい建築物特有の香り。室内は真っ暗だったけれど、彼が蓋のついた壁のスイッチを操作すると、照明がパッと明るくなった。
「わ……」
そこは、すでにリニューアルの準備が整った、式場のチャペルだった。
バージンロードの途中にはキャンドルを模した照明が暖かい光を灯していて、独特の厳かな雰囲気を作っている。祭壇の向こう側は窓になっており、街の夜景を見下ろすことができる。
「素敵。なかなか予約が取れないのも納得だね」
黎也くんと一緒にゆっくりバージンロードを歩きながら、彼に微笑みかける。
彼も同意するように頷き、それから悪戯ぽい目で私を見下ろす。
「俺たちの結婚式はハワイで挙げる予定ですし、ここの予約は取れそうにない。だから、副社長というう立場を利用して、リニューアルオープン前のチャペルに忍び込ませてもらっちゃいました」
「職権乱用って、そういう意味だったんだ」
他のお客さんの予約を奪ったりしているわけでもなく、オープン前のチャペルを会社終わりにちょっと見学するくらいの職権乱用なら許されるだろう。
私もそのおこぼれに預かるような気持で、遠慮がちにチャペルの内装を眺める。
「せっかくなので、祭壇の前まで行きましょう」
「そうだね」
彼に誘われるまま歩みを進めて、結婚式なら神父さんが立っているのであろう祭壇の前までやってくる。
なんだか結婚式の予行演習みたい……。