御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
「美冬さん」
「うん?」
彼に名前を呼ばれて気軽に振り向くと、いつの間に、そしてどこから取り出したのか、黎也くんが大きなダイヤのついた指輪を私に差し出そうとしている。
「えっ? あの、これは……?」
彼の顔と指輪とを見比べ、混乱を落ち着けようとする。
「俺、美冬さんに何度も愛を伝えてきた記憶はありますけど、プロポーズは曖昧になってましたよね。だから、今日ここで改めて美冬さんに結婚を申し込もうって決めてました」
「嘘……じゃ、ないよね」
つい、口をついて出てしまった言葉を慌てて撤回する。
黎也くんが嘘をついたことなんて、今まで一度もない。彼の私に対する気持ちは、いつだってまっすぐで本物だから。
「よくできました。というわけで、美冬さん」
「はい」
彼の改まった口調に、こちらも背筋を伸ばして返事をする。黎也くんの真摯な眼差しに見つめられて、鼓動が優しく揺れた。
「あなたを心から愛しています。どうか、俺と結婚してください」
まだ誰も愛を誓い合ったことのないまっさらなチャペルに、彼の凛とした声が響く。
自分たちが相思相愛だとわかっていても、結婚の約束はすでに交わしていても、この厳かな空間で改めて言葉にしてもらうと、胸に温かな感動が満ちていく。
もちろん、私の返事はひとつだ。
「……はい。喜んで」
微笑みながら承諾すると、黎也くんがそっと私の左手を取る。
そうして薬指に嵌めてもらった指輪は、真新しいチャペルの照明の光を受けて、美しくきらめいていた。
Fin.


