御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~

 谷村さんと別れ、図書館で借りた三冊の小説と百均のお得グッズという小さな幸せが詰まったエコバッグを揺らしながらビルを出る。

 天気がよかったので散歩がてら公園に寄って、借りた本を外で読もうと決める。

 少しだけ贅沢しようと途中のコンビニでホットコーヒーを買い、見ごろを迎えた銀杏のそばにあるベンチに腰を落ち着ける。

 家族連れや犬の散歩をしている人、ランニングをしている運動部の集団の姿などを横目に、ぽかぽかとした日差しの中で本を開いた。

 我ながら、理想の休日の過ごし方すぎる……。

 コーヒーをひと口飲み、まだ一行も読まないうちからほくほくとした気持ちになっていたその時だった。

「芦屋さん?」

 誰かに名前を呼ばれ、反射的に顔を上げる。頭の中に『げ』というひと文字が浮かんだ。

 先ほど谷村さんに会った時は、知り合いに会えてうれしい、という感情が湧いたけれど、今は全く逆の思いで、目の前に立つ人物を見つめる。

 黒のクルーネックのニットにグレーのジョガーパンツという、カジュアルないでたちは普段のスーツ姿と印象が違い、いっそう若々しく見える。

 どうして彼がここに……?

「ふ、副社長……」
「偶然ですね。休みの日に会えるなんて運がいいな」

 無邪気を装った意味深発言に心の警戒度が一気に高まる。

 どうして彼はこうして私に構うのだろう。簡単に騙せそうな顔でもしてるの?

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