御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
金曜日の夜に食事の誘いを断った気まずさも蘇り〝理想の秋の休日〟はすっかり台無しだ。私はパタンと本を閉じ、そそくさと帰り支度を始める。
「ちょっと買い物帰りに寄っただけですので、私はこれで失礼します」
「待ってください。今、ゆっくり本を読もうとしてたでしょう」
わかってるなら声をかけないで無視してくれればよかったのに……!
そう叫びたいのを必死でこらえる。
「用事があるのを思い出しました」
「この辺りにお住まいなんですか? 実は僕も最近引っ越してきたばかりで」
こんなにわかりやすく逃げたいオーラを出しているというのに、副社長は構わずニコニコと話し続ける。
しかも、近所に引っ越してきたって言った……?
「ほら、ここからも見えるあのマンションです。一番近い公園がここなので、時々散歩やランニングに来ていて」
解説を頼んだわけでもないのに、彼が木々の向こう側にそびえ立つタワーマンションを指さした。
あ、あのマンションは……。
『この事業が成功したら、結婚してあのタワーマンションの最上階に引っ越そう。美冬に何不自由ない暮らしをさせてあげたいんだ』
元恋人の口先だけの約束が、唐突にフラッシュバックした。