御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
「じゃあどうして……って、そんな気軽に言える話じゃないですよね」
「……ですね。すみません」
前の恋人との散々な終わり方は自分の中で回想するだけでも凹むし、騙されていた自分が単純に恥ずかしいので、あまり口にはしたくない。
「いえ。僕の方こそ、まだそれほど深い仲になっていないのに、軽々しく芦屋さんの内面に踏み込もうとしてしまいました。もっと僕のことを知ってもらって、芦屋さんが話したくなってくれるのを待ちますね」
深い仲? 僕のことを知ってもらう?
「反省の方向が激しく間違っておられるような気がするのですが……」
失礼を承知で進言してみるものの、副社長はお得意の黎也スマイルを浮かべるだけ。それから腕時計を一瞥して「あ」と呟いた。
「もうこんな時間ですね。遅くならないうちに帰りましょう」
「は、はい」
今、絶対ごまかしましたよね……?
突然急ぎ足になる彼を追いながら、その広い背中に向かって問いかけていた。