御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~

「了解です。牛肉が食べられて、厚揚げが出てこないお店。探しておきます」
「探す……?」
「いえ、こっちの話です。もうすぐ着きますよ」

 そう言われて辺りを見ると、確かに私のアパートのそばの景色だった。

 副社長に送ってもらうなんて気まずいと思っていたけれど、意外とあっという間だった。

 内容はともかく、彼が常に話題を提供してくれていたからだろう。最後の話にはちょっと引っかかったけれど。

「……え、と。芦屋さん、ここに住んでるんですか?」

 建物の前に車をつけてくれた副社長が、信じがたいような目をして私のアパートを見上げる。彼の住むタワマンに比べたらあまりに貧相でびっくりしたのだろう。

 私としては、幻滅してもらって全然かまわない。気を持たせるような発言で胸をかき乱されるよりはましだ。

「はい、そうです。狭いですが住めば都ですよ。では、送っていただいてありがとうございました」

 シートベルトを外して挨拶すると、副社長はハンドルに片手を預けたまま微笑む。

「いえ、僕の好きでしたことですから。それじゃ、おやすみなさい」

 夜の車内で向けられる黎也スマイルは普段よりも破壊力が強く、かぁっと頬が熱くなる感覚がして、慌てて目を逸らした。

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