御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
ファッションデザイナー才賀誉の事務所は、会社から三十分弱の場所、自然豊かな公園のそばにある。
約束の木曜、私は予定通り副社長と彼の事務所に向かっていたが、初めて才賀先生と会うだけでなく、頼りにしていた谷村さんが別の仕事のトラブル処理で来れなくなってしまったこともあり緊張していた。
だって、副社長とふたりきりなのだ。
しかも、才賀先生の事務所へ向かうための車に役員用の送迎車を手配されてしまったために、自分が場違いに思えて居たたまれない。
手土産や持参した資料などに不足がないか、自分の身だしなみに失礼な所はないかなどを繰り返し確認することで、ぎりぎり平静を保っている。
そんな私に対し、後部座席で隣り合う副社長はのんびり車窓から外を眺めている。
「才賀先生との交渉がうまくいったら、あの公園でボートでも乗りましょうか?」
大きな池を擁する公園のそばを通りかかると、彼がそう言って私の方を振り返る。緊張をほぐしてくれようとしているにしても、もう少し空気を読んでほしい。