御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
才賀先生の事務所に行くからと、持っている仕事着の中でも比較的新しめのものを選んで着てきたけれど、値段は彼の言う通りリーズナブルなものばかりなのだ。
さすがは服のプロ……。でも、私が服にお金をかけられないのは、決して会社のせいではない。
「あの、この服は私が個人的な好みで――」
「才賀先生。私の部下をからかうのはおやめください」
言い訳しようと口を開いた直後、間に割って入ってきたのは副社長だ。才賀先生の独特な会話のペースに動揺していたところだったので、対応を代わってもらえてホッとする。
「からかう? このファッションデザイナー才賀誉が、あなたのかわいい部下のファッションに助言しているんですよ? 普通、ありがたがると思いますけど」
やばい。才賀先生、怒ってる……?
ハラハラしながら副社長の顔を見上げるも、微塵も動揺した様子がない。
「私どもは、先生とビジネスのお話をするためにここにおります。先生の貴重なお時間を無駄にしないためにも、本題のテナント出店についてお話させていただきたく存じます」
「副社長さんはせっかちだなぁ。しかし、どっちにしろ私はやりませんよ」
才賀先生の冷たい声で、ますます室内の空気がぴりぴりとした緊張感を纏った。