御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
「理由をうかがってもよろしいでしょうか?」
あくまでソフトな調子で、副社長が尋ねる。
才賀先生と彼との間には五歳の年の差があるけれど、慌てたり媚びたりしないその姿は才賀先生と対等な存在に見えた。さすがは御門ホテル次期社長といったところか。
「御門ホテルが歴史あるご立派な老舗だというのは理解しています。ですが、常に新しいものを追い求める私のブランドとはカラーが合わない。もう少し、古臭いデザインをするタイプのデザイナーを探した方がいいと思います」
才賀先生は退屈そうな口調で言うと、ソファにどっかり腰かけて、テーブルの上でドーナツの包装紙を剥ぐ。そして箱から個包装のドーナツをひとつ取り出すと、私たちの存在など意に介さないというように、むしゃむしゃ食べ始めた。
「んー、うまい。手土産のセンスだけは抜群」
〝だけ〟って……完全に私たちに対する嫌みだ。
服装を値踏みされたこと、御門ホテルを古臭いと言われたことに対する悔しさも相まって、無意識に拳に力が入る。
その直後、力んだ私の手にそっと副社長の手が触れた。顔を上げると、目が合った彼が耳元に顔を近づける。
「大丈夫。想定内です」
「え……?」