御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~

『じゃあ、お先に失礼します。御門くん、立派になるんだよ……!』

 これから彼氏のもとに向かうというのに、芦屋さんは律儀にもう一度俺を励ましてくれた。胸に切ない痛みを覚えながら、それでも彼女を好きになっていく気持ちが止められない。

 恋人がいても結婚はまだしていないのなら、俺にも可能性はある……? 

 とはいえ今の芦屋さんは俺のことなんて眼中にもないだろうし、俺自身、芦屋さんの隣に立つのにふさわしい男とはいえない。

 この気持ちを態度に表しても、今はプラスに働かないだろう。

 自分の中にある葛藤は振り切り、後輩として彼女に微笑みかけた。

『はい、頑張ります。芦屋さんは、デート楽しんできてくださいね』
『ありがとう』

 無事に芦屋さんを見送り終わると、思わずため息がこぼれる。そんな俺を見て、谷村さんがフッと苦笑した。

『つらそうだな、御門。飲みに行くか?』

 先ほどのやり取りだけで、谷村さんは俺の気持ちを察していたらしい。同情するようにそう言って、ジョッキを掲げる仕草をした。

 常に男前な口調でサバサバしているが、本来の彼女はとても面倒見の良い上司なのだ。

 しかし、谷村さんの厚意にあっさり甘えてしまったら、芦屋さんに釣り合う男になるという目標が、遠ざかってしまう気がした。

 俺はまだ、芦屋さんを完全にあきらめたわけではない。

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