御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
その気持ちは、以前付き合っていた恋人に植え付けられたものなのだろうか?
あんなに幸せそうだったのに、彼女と恋人の間にいったいなにがあったのだろう――。
彼女が隠している心の傷をどうしたら打ち明けてもらえるのか。そして、癒やせるのか。
そんなことを考えていると、疑似デートの最中だからといって手放しで楽しんでばかりもいられなかった。
ひと通り買い物を済ませると、俺は予約していたイタリアンレストランに芦屋さんを誘った。
芦屋さんは激しく遠慮していたが、『才賀誉を落とす作戦会議です』と言いくるめ、やや強引に連れてきた感じだ。
テーブルについた後も、大理石の床や天井の豪華なシャンデリアをキョロキョロと眺めた芦屋さんは、かなり気後れした様子で肩をすくめる。
「このお店もまた、私には分不相応な香りがぷんぷんしますが……」
「そんなことありませんよ。お肉が美味しくて、厚揚げが出てこないお店を一生懸命探した結果です」
緊張を少しでもほぐそうと、そんな冗談を口にした。芦屋さんはそれでもまだ硬い表情を崩さない。
「イタリアン、嫌でした?」
「いえ、そんなことは」
「じゃあ、どうしてそんなに浮かない顔なんですか?」
俺の問いに、芦屋さんは困ったように眉を八の字にした。