御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
相手企業の担当者に説明を受けながら営業中の店内を見学していると、プラスチックカップのコーヒー飲料が並んだ売り場の前に、知り合いの姿があることにふと気づく。
美冬さん……?
真剣な目で商品を選ぶ彼女は俺の姿に気づいていないが、どう見ても本人だった。
思いがけず顔が見られたことにささやかな喜びを感じつつ、少しだけ疑問に思う。
節約に喜びを感じる美冬さんが、どうしてこんな店にいるのだろう。
誰かにお使いを頼まれた、とか……?
「いかがですか、御門副社長。御門ホテルの洗練された雰囲気とマッチする店だと私どもは自負しておりますが、是非ご感想を」
案内してくれていた担当者の声で我に返る。意中の相手に気を取られて上の空になるなんて、まるで思春期のような自分が恥ずかしい。
気まずさを取り繕うように、軽く咳払いをした。
「……ええ。いい意味でコンビニらしくなく、今回のリニューアルで弊社が考えるコンセプトとも非常に親和性のあるお店だと感じました」
「ありがとうございます。それでは続いてホットスナックのご試食を――」
「ちょっと待ってください。ATMではお金は受け取れません……!」
店内のどこかから、美冬さんの焦った声がした。
話の内容が内容だったので、コンビニの担当者も怪訝そうな顔で声のした方へと移動する。
気になるので俺も後を追うと、店内の隅に位置するATMの前で、美冬さんと老婦人がなにか話していた。コンビニの担当者がふたりに歩み寄っていく。