御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
「なるほど……じゃあ、店舗同士の区画も近い方がいいですね。ちなみにそのファッションデザイナーというのはどなたなんです?」
「それはまだ秘密です」
副社長が口元に人差し指を立て、悪戯っぽく微笑む。
まだ確定ではないとはいえ、せっかく誘致するブランドを決められたのに、具体的な話を教えてもらえないのでは先へ進めない。
「教えていただけないと私の仕事がストップしてしまうのですが」
少し不満げな口調で言うと、副社長は軽く眉を下げて笑う。黎也スマイル・苦笑バージョンだ。
「そもそも、帰るよう促すつもりで声をかけたんです。他の部署もほとんど真っ暗なのに、芦屋さんだけこんな時間まで残ってる。……ちょっと頑張りすぎですよ」
痛いところを指摘され、う……と言葉に詰まる。
残業は会社全体としても推奨されていないし、私自身、寂しさを紛らわすために仕事を利用していたといっても過言ではないから。
「すみません……では、帰ります」
大人しく彼の言葉に従うことにして、パソコンの電源を落とす。そのままデスクで帰り支度をしていたら、副社長がこちらに一歩近づいてくる。
「お腹空いてません? 一緒に夕食でもどうですか?」
……また誘われてしまった。
バッグに荷物を詰める手をぴたりと止め、心の中で呟く。