御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~

 不思議で仕方ないのだけれど、御門副社長は彼はどうしてか時々私を食事に誘ったり、甘い言葉をかけてきたりする。

 彼ほどの容姿とスペックを持った人なら、私なんかに声を掛けなくても、女性の方から寄ってくるだろうに。

「遠慮します。夕食なら朝作ってきたものが家にありますので」

 こうして彼の誘いを断るのも初めてじゃないので、きっぱりそう言ってバッグを持つ。

「それは確かにもったいないですね。芦屋さんの手料理、僕も食べたいな」
「ひ、ひとり分しか用意してませんので」

 あっさりあきらめたかと思いきや、余計な発言まで付け足されたので不覚にも軽く動揺してしまった。

 彼を振り切るようにぺこりと会釈し、「お疲れ様でした」と一方的に告げて立ち去ろうとしたものの。

「じゃあ、日を改めれば作ってくれますか?」

 すれ違いざまに軽く手首を掴まれ、振り向いたら副社長が甘えるようにそう言った。

 顔がいいから見つめられるだけでついドキドキしてしまう。本人も自分の魅力を十分わかった上でやっているに違いない。

 けれど、私は甘い言葉を惜しげもなく吐く男性、中でも彼のように住む世界が違う人物のことは信用しないと心に決めている。

 心を許したら最後。全部奪われて捨てられるだけだ。

「私の作るものは節約料理なので、副社長のお口には合わないと思います」
「そんなことはありませんけど……食事が無理なら送るだけでも」
「結構ですっ」

 彼の手を振り払いながら言ったら、勢いで語気が強くなってしまった。

 副社長は寂しそうに笑って「しつこくしてごめんなさい」頭を下げる。

 傷つけてしまったかと少し気になったが、私はそのままなにも言わず、逃げるようにオフィスを後にした。

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