御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
「うまくいってひと安心だな。副社長も喜ぶだろうから、早めに報告を頼む」
「そうですね。メールを入れておきます」
社用車に乗り込んですぐ、私は仕事用のスマホで副社長へのメールを作成する。
才賀先生との交渉がうまくいき、契約締結に向けて無事進行していることに加えて、やっぱりあの件にも触れずにはいられなかった。
【追伸:おかげさまで今日は服のセンスを褒められました。ありがとうございました。 芦屋】
メールを見た彼が笑顔になる姿を想像すると、不思議と心が和む。
最近、プライベートでは彼に冷たくしてしまうことが多かったから、せめて仕事上ではいい関係を築きたい。
私では、彼の気持ちに応えられないから……。
動き出す車の中で思い起こすのは、服選びの後で訪れたレストランでの会話。
これまで、彼はなぜ私に構ってくるのかと考えるたびに浮かんでは排除してきた可能性を、とうとう本人の口から告げられてしまった。
『リーシング部で仕事を教えてもらっていた頃です。俺が初めて美冬さんに惹かれたのは』
彼が自分を『俺』と呼ぶのを、その時初めて聞いた。仕事を教えていた頃でさえ、彼はきちんとした言葉遣いで部署のみんなと接していたし、一人称も『僕』だったのに。