御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
『ああ、すみません。かなり脱線してしまいました。それでは、引き続き才賀先生のプロジェクトをよろしくお願いします』
「はい。それでは失礼します」
スマホを耳から離し、通話終了の操作を済ませると、ふう、と息をつく。
今まではもう少し彼と普通に会話ができていたのに、いちいち変な風に意識してしまう。
やっぱり、服を買ってもらった日に、彼の気持ちを打ち明けられてしまったせいだろう。
それが嘘か本当かはわからないけれど……。
「副社長、なんだって?」
私がスマホをしまったタイミングで、谷村さんが運転席から声をかけてくる。
副社長との会話の大半が仕事には関係のないことだったので、必死で伝えられそうな内容だけをピックアップする。
「お手柄だと褒めてくださいました。引き続きプロジェクトをよろしく、とも」
「そうか。じゃあ、頑張らないとな。才賀先生は少し気まぐれなところがありそうだから、ちゃんと契約するまで気が抜けないぞ」
「はい。そうですよね。慎重に進めます」
谷村さんのおかげで冷静さを取り戻した私は、会社に戻ってからも精力的に自分の仕事をこなした。
いつかは社畜の亡霊だなんて自分を卑下したこともあったけれど、私はやっぱり仕事が好きなのだ。
恋人がいようがいまいが、お金があろうがなかろうが、御門ホテルの社員として懸命に働く自分を、寂しい奴だなんて思わない。