御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
十一月を過ぎ、夜はかなり気温が下がる季節になった。私は薄手のコートの前をかきあわせて最寄りの駅に急ぎ、ちょうどやってきた電車に乗り込む。
空いている座席を見つけて腰かけたところで、ようやくホッと息をついた。しかし、副社長を強めに拒絶してしまった罪悪感は、まだ胸に残っている。
……仕方ないじゃない。男性の口から出る耳触りのいい言葉には、絶対に裏がある。これは経験上学んだ法則なのだから。
さっき口にした『節約料理』のひと言も、食事の誘いを断るための方便ではなく事実だ。
毎日真面目に働いているのに、今の私にはお金がない。
半年前、『社長(ベンチャー企業)』で『起業家』で『投資家』でもあった前の恋人に懇願されて貯金のほとんどを貸し、そのまま逃げられてしまったからだ。
『早く美冬と結婚するためにも、今の事業を軌道に乗せたいんだ。俺に投資すると思って、金を貸してほしい。絶対に幸せな将来を約束するから』
電車に揺られながら、彼にまんまと騙されていた馬鹿な自分を回想する。
恋は盲目とはよく言ったものだ、と今なら客観的に考えられるけれど、当時は彼に夢中でなにもわかっていなかった。
夢を追う恋人を応援する自分に酔っていた部分もあるのかもしれない。