御門くんの執愛攻めには抗えない~策士な年下御曹司は偽装婚約で愛し堕とす~
アイツ……。と、本来なら『先生』と呼ばなければならない取引先のファッションデザイナーに対し、内心わなわなと震える。
まったく、傷だらけの美冬さんになんてことをしてくれるんだろう。そんなものは告白なんて呼ばないし、断られて当然だ。
「ちなみに、なんて言って断ったんですか?」
「それは……」
言いよどんだ美冬さんが、助手席からちらりと俺の横顔を窺う。なにか大切なことを言われる気がして、ハンドルを握る手に力が入った。
「今の私には、恋愛する気力も体力もない、ってことと……」
確かめるようにゆっくり、言葉を紡ぐ美冬さん。才賀先生がいかにして彼女にフラれたのかを聞いているだけなのに、どうして胸が高鳴るのだろう。
たっぷり間を置いた後で、彼女はもう一度だけ、俺の方を見た。
「もしも次に恋愛をすることがあるなら……相手はたぶん、ものすごくしつこい年下の男性が相手だと思うので、ごめんなさいって。そう言って断りました」
消え入りそうな声ではあったが、俺の耳にはしっかりと聞こえた。
心臓が、止まるかと思った。
だってそんなの……勘違いするなという方が無理だろう。