罠に落とされた生贄姫は、荒野の悪魔の最愛となる
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「――いるんでしょ」

 部屋を出たイサベラが通路の壁に視線を向けた。
 黒髪の青年の姿が、すぅ、と音もなく浮かび上がる。

「で、どうでしたか」
「例えるならば『ルベルトワの可憐なる白百合』ってところかしらね。髪の毛なんてツヤツヤで、お肌もプリプリ!一体どんな手入れをしたらああなるのかしら……ってそんな怖い顔しないでよ」
「年寄りの僻みは結構ですので、報告をお願いします」
「なんか言った?」
「いえ別に」

 青年はカッと見開いた彼女の眼から逃げ出すようにそっぽを向いた。

「疑うだけ無駄よ。あの子なんにも知らないわ」
「……」
「何よ、あたしの『眼』が信じられないわけ?」

 不服そうに眉を顰める青年を見て、イサベラが鼻を鳴らす。

「……そういうわけでは。とりあえず、あなたはこのまま監視を続けてください」

 声だけ残して、青年の姿は再び景色に溶けて消えた。

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