罠に落とされた生贄姫は、荒野の悪魔の最愛となる
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それから暫く時が過ぎた、ルベルトワ王国の王の執務室。王妃、第二王女エミリー、宰相ルドルウィン、そして王国の要職を占める大臣たちが集められた室内には、重く冷たい空気が満ちていた。
「――シルヴィが荒れ地で襲撃に遭い、殺されたそうだ」
王が憔悴した面持ちで口を開く。
シルヴィが荒れ地へと向かってから早一ヶ月。いつまでも帰らない彼女を案じた王の令で、宰相が密かに荒れ地へと送っていた間者の報告書には、衝撃的な結論が記載されていた。
「そんな……」
顔を真っ青にして今にも気を失いそうになる王妃に、周囲が慌てて支えに入る。
「アラン卿、これはどういう事でしょうか?荒れ地は協定に合意する意向だったのでは? なのに……このような結末になるとは!」
「ルドルウィン卿どうか落ち着きを。これは何かの間違いという可能性もあります。ですので今一度、慎重な捜査が必要かと」
苦々しい表情で報告書を叩く宰相ルドルウィンに、アラン卿が厳しい表情ながらも冷静に意見を述べる。
そんな緊迫した室内の中で、エミリーが突然顔を覆うとその場に崩れ落ちた。
「わたしの……わたしのせいだわ……!わたしが荒れ地に行きたくないと言ったばかりにお姉さまが!」
激しく動揺した様子のエミリーは、頭を振って泣き叫ぶ。
「エミリー様、おやめください! あなた様のせいではありません!」
「そうです。憎きはあの荒れ地の魔王です。それにシルヴィ様も、エミリー様がご自身を責められるのを望んでなどいらっしゃらないはずですぞ!」
側近たちが慌てて駆け寄ると重苦しい場は一転、第二王女を慰めようと混乱に包まれる。
漸くして場が静まると、王は深く息を吐き出した。
「どうしてこんな事になったのか……」
「――お気持ちはお察し申し上げますが」
そのとき、宰相ルドルウィンが、沈痛な面持ちで王に進言した。
「シルヴィ様がお亡くなりになり、いかに悲しみが深いとはいえ、国政を滞らせるわけにはいきません。そして……こうなった以上、次の王位継承者も早急に決めなければなりません」
「ルドルウィン卿!先程申し上げた通り、まだシルヴィ様が亡くなられたと決まった訳ではありません。今の発言は不謹慎です!」
アラン卿は立ち上がり、宰相を激しく叱責する。
「しかし、この混乱に乗じて良からぬものが現れないとも限りません。王国の安定のためにも、万が一の備えは必要です」
宰相は頑として譲らない。彼の言葉は王国の現実そのもので、確かに正論としか言いようのないものだった。
「すまないが……その件はまた後にしてはもらえんか」
火花を散らす二人の会話を終わらせたのは、力無く呟く王の一声だった。やむなくこの日は一旦終了となり、その場は解散となった。
それから暫く時が過ぎた、ルベルトワ王国の王の執務室。王妃、第二王女エミリー、宰相ルドルウィン、そして王国の要職を占める大臣たちが集められた室内には、重く冷たい空気が満ちていた。
「――シルヴィが荒れ地で襲撃に遭い、殺されたそうだ」
王が憔悴した面持ちで口を開く。
シルヴィが荒れ地へと向かってから早一ヶ月。いつまでも帰らない彼女を案じた王の令で、宰相が密かに荒れ地へと送っていた間者の報告書には、衝撃的な結論が記載されていた。
「そんな……」
顔を真っ青にして今にも気を失いそうになる王妃に、周囲が慌てて支えに入る。
「アラン卿、これはどういう事でしょうか?荒れ地は協定に合意する意向だったのでは? なのに……このような結末になるとは!」
「ルドルウィン卿どうか落ち着きを。これは何かの間違いという可能性もあります。ですので今一度、慎重な捜査が必要かと」
苦々しい表情で報告書を叩く宰相ルドルウィンに、アラン卿が厳しい表情ながらも冷静に意見を述べる。
そんな緊迫した室内の中で、エミリーが突然顔を覆うとその場に崩れ落ちた。
「わたしの……わたしのせいだわ……!わたしが荒れ地に行きたくないと言ったばかりにお姉さまが!」
激しく動揺した様子のエミリーは、頭を振って泣き叫ぶ。
「エミリー様、おやめください! あなた様のせいではありません!」
「そうです。憎きはあの荒れ地の魔王です。それにシルヴィ様も、エミリー様がご自身を責められるのを望んでなどいらっしゃらないはずですぞ!」
側近たちが慌てて駆け寄ると重苦しい場は一転、第二王女を慰めようと混乱に包まれる。
漸くして場が静まると、王は深く息を吐き出した。
「どうしてこんな事になったのか……」
「――お気持ちはお察し申し上げますが」
そのとき、宰相ルドルウィンが、沈痛な面持ちで王に進言した。
「シルヴィ様がお亡くなりになり、いかに悲しみが深いとはいえ、国政を滞らせるわけにはいきません。そして……こうなった以上、次の王位継承者も早急に決めなければなりません」
「ルドルウィン卿!先程申し上げた通り、まだシルヴィ様が亡くなられたと決まった訳ではありません。今の発言は不謹慎です!」
アラン卿は立ち上がり、宰相を激しく叱責する。
「しかし、この混乱に乗じて良からぬものが現れないとも限りません。王国の安定のためにも、万が一の備えは必要です」
宰相は頑として譲らない。彼の言葉は王国の現実そのもので、確かに正論としか言いようのないものだった。
「すまないが……その件はまた後にしてはもらえんか」
火花を散らす二人の会話を終わらせたのは、力無く呟く王の一声だった。やむなくこの日は一旦終了となり、その場は解散となった。