罠に落とされた生贄姫は、荒野の悪魔の最愛となる
玉座には無骨な黒色の鎧をまとった男が鷹揚に膝を組んで座っている。頬杖をつきシルヴィをじっと見つめている。……見つめている、はずだ。
彼の顔は鎧と同じ黒色の兜に覆われているので視線の先はわからない。だが、この身は確かに、ジリジリと突き刺すような何かを感じている。
「王女様、どうぞこちらに」
青年の声にハッとする。慄く足で石畳を、ようやく一歩踏み出した。
一歩。そしてまた一歩。ゆっくり玉座へ近づいていく。
「ルベルトワ王国第一王女、シルヴィ・アーナリス・ベルグ・バラデュールにございます」
ドレスの裾を広げ、深々と腰を折る。声が震えていない事に安堵して、ふ、と少し息を吐く。
「長旅ご苦労だったな。まぁ、楽にしてくれ」
太く、くぐもった声が鎧の中から聞こえた。ゆっくりと身を起こす。動悸も収まりだいぶ落ち着いてきたところで、シルヴィはもう一度彼を見つめた。
先程のような威圧感はもう感じない。しかし、仮にも一国の王女の前であるというのに、名乗りもせず、立ちあがる気配すら見せないのはどういうことだろう。
気位の高い者であれば激怒するところなのだろうが、シルヴィは違った。砕けた口調から見ても、きっとそういう人柄なのだろうと、気を取り直しただけだった。
「すまないが、こういう堅苦しいのは苦手でね。さっさと終わらせてしまおうか。で、書簡は?」
「は、はい、ここに……」
飄々とした言い草に一寸あっけにとられるも、隣の侍女が捧げ持つ書簡に手を伸ばそうとしたその時だ。
魔王の手が、シルヴィの手首をしっかと掴んだ。ぐい、とそのまま引き倒される。
「な、何をっ……?!」
身を起こすシルヴィの目に飛び込んできたもの。それは、鋭いナイフを手に今にも襲いかからんとする侍女の姿と、彼女の前にそびえ立つ黒く大きな影だった。
彼の顔は鎧と同じ黒色の兜に覆われているので視線の先はわからない。だが、この身は確かに、ジリジリと突き刺すような何かを感じている。
「王女様、どうぞこちらに」
青年の声にハッとする。慄く足で石畳を、ようやく一歩踏み出した。
一歩。そしてまた一歩。ゆっくり玉座へ近づいていく。
「ルベルトワ王国第一王女、シルヴィ・アーナリス・ベルグ・バラデュールにございます」
ドレスの裾を広げ、深々と腰を折る。声が震えていない事に安堵して、ふ、と少し息を吐く。
「長旅ご苦労だったな。まぁ、楽にしてくれ」
太く、くぐもった声が鎧の中から聞こえた。ゆっくりと身を起こす。動悸も収まりだいぶ落ち着いてきたところで、シルヴィはもう一度彼を見つめた。
先程のような威圧感はもう感じない。しかし、仮にも一国の王女の前であるというのに、名乗りもせず、立ちあがる気配すら見せないのはどういうことだろう。
気位の高い者であれば激怒するところなのだろうが、シルヴィは違った。砕けた口調から見ても、きっとそういう人柄なのだろうと、気を取り直しただけだった。
「すまないが、こういう堅苦しいのは苦手でね。さっさと終わらせてしまおうか。で、書簡は?」
「は、はい、ここに……」
飄々とした言い草に一寸あっけにとられるも、隣の侍女が捧げ持つ書簡に手を伸ばそうとしたその時だ。
魔王の手が、シルヴィの手首をしっかと掴んだ。ぐい、とそのまま引き倒される。
「な、何をっ……?!」
身を起こすシルヴィの目に飛び込んできたもの。それは、鋭いナイフを手に今にも襲いかからんとする侍女の姿と、彼女の前にそびえ立つ黒く大きな影だった。