(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
久しぶりに聞いた、私の名を呼ぶ大好きな声にこんな状況でも胸が詰まって苦しくなる。

逃げなくては。

今、愁さんと話してしまったらきっと、恋心を封印できなくなる。


「沙和っ」


愁さんの声が背中から追いかけてくるが、振り向かず走り続けた。

けれど足の長さの違いなのか、しばらく走り続けたところで、腕を取られた。


「いや、離して……!」


彼の手から逃れたくてもがく。

すると背中から強引に抱き込まれ、伝わる体温に心が震えた。


「頼むから、話を聞いて」


彼の乱れた息が私の耳朶を震わせる。

愁さんらしくない焦燥感のまじった声に驚くが、今は受け止める余裕がない。


「聞きたくない、今は無理」


拒絶を口にした途端、強引に体を反転される。

悲しみと苦しみが入りまじったような目をした愁さんが胸元に抱きこんだ私の顔を覗きこむ。


「……お願いだから」


唐突に大きな両手が私の顎を掬い上げ、口づけられる。

乱れた黒髪が私の額をかすめ伏せた長いまつげが視界いっぱいに広がった。

驚きで目を見開いたままの私に構いもせず、さらに体を力強く引き寄せられ、深いキスを仕掛けてくる。

息苦しさに、彼の胸元を叩くけれど解放してもらえない。


「な、んで……!」


抵抗を聞き入れてくれたのか、唇が一瞬離れた隙に息を吸い込み、声を漏らす。
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