(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
自分がどれほど愁さんに惹かれているのか、改めて思い知らされる。

立花さんには申し訳ないけれど、結婚する前の今ならばふたりはもう一度結ばれることができると自分に言い聞かせていたはずだった。

しょせん私はリハビリのかりそめの婚約者で、分不相応な恋は早々にあきらめるべきだと理解していたはずなのに。

大丈夫、離れられると顔を合わさなくなった最近では考えていたくらいなのに。

キリキリ締めつける痛みに心が悲鳴を上げる。

自分の恋心の深さを思い知らされた気がした。

早く、ふたりに気づかれる前にここから立ち去らなくては。

頭の中でもうひとりの自分が必死に警告するのに、経験した記憶のない深い悲しみと息苦しさに視界が滲み、周囲の景色が霞んでいく。

こらえきれなくなった涙が視界を塞ぎかけた瞬間、向かい側を歩く愁さんの視線が動いた。

私を認識した綺麗な二重の目が大きく見開かれる。


「沙和……?」


大きくはないはずなのに真っすぐ耳に届いた彼の低い声にびくりと体が揺れた。

辺見さんを振り返りもせず、長い足でこちらに向かってくる。

私ははじかれたようにもつれる足を必死に動かして走りだす。


「待って、沙和!」


大きな声が響き、周囲の人が何事かと視線を向けるが、気にしている余裕はない。

視界の片隅に映った辺見さんは驚いた表情を浮かべていた。
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