(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
ふたりきりになった途端、運転手が待機する彼女の車に案内された。


「乗ってちょうだい。話をしたいだけ、危害をくわえるような真似は絶対にしないから」


うちの会社の車だからと付け加える辺見さんの目には翳りがなかった。

自分の身の不安や心配はあったけれど、真っすぐ私を見つめる辺見さんを信じたいと思った。

私たちは後部座席に肩を並べて座る。

疑うつもりはないけれど、私はジャケットのポケットに、スマートフォンを念のためそっと忍ばせた。


「美術館の近くにある、私がよく行くカフェに案内してもいいかしら?」


淡々とした口調で尋ねられて了承する。

自分がよく知っている場所付近なら万が一のときもまだ対処しやすいはずだ。

改めて辺見さんに視線を向ける。

以前は手入れが行き届いていた髪や肌はくすんでいて、目の下にはうっすら隈が見えた。

唇は硬く引き結ばれ、どこか緊張しているようだった。


「突然会社まで押しかけて、ごめんなさい」


年季の入った荘厳な洋館のような建物の前で車が止まる直前に、辺見さんが再び口を開いた。

愁さんの会社にも突然やってきたらしいし、どうやらこの人は思い立ったら即行動するタイプのようだ。

車を降りて店内に足を踏み入れる。

すぐに従業員の男性に、テーブルと四脚の椅子が置いてある個室に案内された。
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