(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
庭園での失態の日から半月ほどが過ぎた。

七月に入り、蒸し暑さが増している。

課長は他部署への異動が決まり、私の上司が変わった。

けれど課長の結婚式など幸せな噂を聞くたび、まだ少し心が揺れる。


「失恋相手と顔を合わせる機会が減ってよかったじゃない」


運よく空いていたふたり掛けのテーブル席に座り、注文したざる蕎麦が運ばれてくるのを見つめながら親友があっさり口にする。

同じタイミングで昼休みがとれた木曜日、私たちは会社から徒歩十分ほどのお気に入りの蕎麦屋に来ていた。


「まあ、この半月くらいは沙和にとったら怒涛の出来事続きよね。その中でも頼子さんの弟とひと晩過ごしているのが一番衝撃的だったけど」


「すず、声が大きいってば」


「大丈夫、板谷の本社はもっと駅に近いでしょ。お昼休みにここまで来ないわよ」


親友が肩をすくめて話す。


「まだ課長を引きずっているの?」


「ううん、多分違う」


真っすぐな質問にどう答えるべきか一瞬迷いながらも正直な想いを告げる。

失恋当日はとてもつらくてショックだった。

元々恋愛経験は多くなく、学生時代に交際していた相手とは就職後すれ違いが続き、別れてしまった。

以来、課長に出会うまで恋はしていなかった。
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