(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
八月に入り、セミの鳴き声に比例するように気温が上がる毎日が続いていた。


【今日の午後三時過ぎ、そちらに向かう】


お盆が近い金曜日の昼休み、社内の食堂に向かう私のスマートフォンに板谷社長からのメッセージが届いた。

驚きで思わず二度見する。

午後から外出予定はなかったか、記憶を探る。

仕事で不在という状況を作り出したい。

するとまるで私の心中を見透かしたかのように追加のメッセージが届く。


【待っていて】


端的な文面に鼓動がひとつ大きな音を立てる。

板谷社長の考えがよくわからない。

キツイ物言いをしておきながら、泥酔した私を見捨てずに介抱してくれた。

唐突で強引な会社訪問だったけれど、無理強いされたわけじゃない。

重要取引先という立場を利用もしない。

多忙なのに、わざわざピアスを返却に来てくれる理由が一番不明だ。

前回の来店から一カ月近く経ち、からかわれただけではと正直思っていたのに。

重い息を吐く。

あれこれ考えても答えは見つからず、最終的に思考を放棄し【お待ちしています】とだけ返信した。

どうやら今回の来訪は、商談のためで事前にうちの上層部と約束していたらしい。

無用な注目を避けるため、直前まで極秘にされていたそうだ。

想像以上の厳戒態勢に驚くと同時に立場の違いを思い知る。

ピアスのためと思い上がっていた自分がさらに恥ずかしい。
< 39 / 149 >

この作品をシェア

pagetop