(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「失礼します。浦部です」


八畳ほどの広さのある応接室に足をゆっくりと踏み入れる。

室内奥に置かれてあるソファに、板谷社長は長い足を組んで腰かけていた。

ただ座っているだけなのに、なんでこれほどまでに魅力的なのだろう。


「浦部さん?」


甘めの低い声が鼓膜を震わせる。

思わず挨拶も忘れて見つめてしまい、慌てて声を出す。


「お待たせして申し訳ございません。いつもお世話になっております」


できるだけ平静を装って、型どおりの挨拶をする。


「いや、突然呼び出して悪かった」


颯爽と立ち上がって近づいてくる。

向かい合って立つ距離の近さに戸惑う。


「ひさしぶり。結局別の場所で会えなくて悪いけど」


少し屈んだ彼がさらに一歩私に近づき、耳元でささやく。

その声に背中にしびれがはしる。

距離を取ろうとする私にさらに彼が語り掛ける。


「ドアを開けたままだから私的なやり取りが筒抜けになる。変な詮索を避けるためにも、この距離でやり取りさせてほしい」


そう言われて、足が止まる。

彼の言う通り、私物を返してもらっているのが知られでもしたら、後々詳細を尋ねられる。

提案にうなずいた私に、彼はふわりと相好を崩す。

これまでとは違う柔らかな表情に鼓動が速くなっていく。
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