(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「今日は来てくれてありがとう。少しイベントを手伝ってもらってもいいか?」


「もちろんです」


撮影会の裏側を見れるなんて滅多にない経験で興奮する。

私の返答に彼が相好を崩す。


「助かる。足は……大丈夫そうだな」


そう言って、私の左手を取り自身の長い指と絡ませた。

あまりに自然な動作に反応が遅れる。


「板谷社長……!」


思わず声を上げる私の唇に、彼の人差し指がそっと押し当てられた。

突然の仕草に驚き、鼓動が一気に速まっていく。


「愁」


「え?」


指が離れた瞬間、彼の発言を聞き返す。


「婚約者なんだから、名前で呼んで」


「いえ、でも……」


「本気だと言わなかった?」


私の躊躇いを見透かしたかのように、問いかけられる。

真っすぐな視線から目を逸らせない。


「沙和」


甘い声で初めて名前を呼ばれた。

こんなにも優しく名前を呼ばれた経験なんてなく、鼓動がひとつ大きな音を立てた。


「俺の名前を呼んで」


もう一度言われて、微かに開いた唇がかさつく。

必死に唇を動かし、声を絞り出す。


「し、愁、さん……」


「呼び捨てがいいんだけどな。まあ、今は我慢する」


甘やかに口角を上げ、私のうなじにかかる後れ毛に長い指でそっと触れる。

今日は暑いので頭の高い位置で髪をまとめていた。

触れられた箇所がじんわりと熱を持つ。
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