(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「千奈!」


愁さんがひと際厳しい声をあげる。

腕の解放を視線で伝えるも愁さんに無視され、仕方なくそのままの体勢で口を開いた。


「……はじめまして。浦部沙和と申します」


「可愛らしい方ね。そうだわ、浦部さんもパーティーに是非出席してくださらない?」


無邪気な誘いに戸惑う。

勝手な返事はできない。


「返事は後日に。着替えがあるので失礼する」


迷う私の代わりに愁さんが素っ気なく答える。

そして反対方向に私を促し歩き出そうとする。


「あの、失礼します」


慌てていとまを告げる。

その瞬間、泣きだしそうな表情の辺見さんが目に映った。

着替え終えた私たちは、庭園から歩いて十分ほどの場所にあるカフェに入った。

打ちっぱなしのコンクリートの外壁が目立つお洒落な外観のカフェは、昼が近いせいか、少し混雑していた。

運よく空いていた窓際のテーブル席に腰をおろす。


「不愉快な思いをさせて悪かった」


愁さんの謝罪に首を横に振る。


「気にしないでください。そもそも謝っていただく必要はないです」


テーブルに置かれた小さな花瓶には鮮やかなオレンジのガーベラが一輪活けてあった。

その太陽のような花を見つめながら、再度少々重い口を開く。


「辺見さんが婚約者だったんですね」


「元、な」


軽く眉をひそめて訂正される。
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