(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「どうしてその色を……私は身に着けられなかったのに……」


小さなつぶやきは上手く聞き取れず、今にも泣きだしそうな悲壮感漂う様子に慌てて声をかけた。


「大丈夫ですか? ご気分が優れませんか? どこか休める場所に」


「……必要ないわ。なぜ私じゃなくて、あなたなの?」


私の発言を鋭く遮った辺見さんに涙目で睨みつけられる。

辺見さんの問いかけの意味が理解できない。


「今日はお招きいただき、ありがとうございます」


戸惑う私の背後から愁さんの低い声が響く。

課長のときと同じように、腰に添えられた温かくて大きな手に体からストンと力が抜けた。


「愁く、ん」


辺見さんが目を見開き、彼の名前をまるで焦がれるように口にする。

どうやら津田さんが愁さんを呼びに行ってくれていたようだ。

「立花さんのビジネスは順調なようですね。カフェの成功を祈っています」


淡々と言葉を紡ぐ愁さんに、辺見さんがこらえきれないように強い口調で問いかける。


「なんで浦部さんがこの色を?」


「沙和のドレスは私が選びました。たったひとりの大事な人なので」


「そんな、ありえない! だって私は……っ」


「辺見様、立花様がお捜しになっておられます」


大声をあげかけた辺見さんに、津田さんがすかさず口を挟む。

すると先ほどの感情の高ぶりが嘘のように、辺見さんは怯えた様子で周囲をキョロキョロと見回す。

少し離れた場所にいた長身の男性が厳しい表情を浮かべて、こちらに向かってくる。
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