(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
「……失礼します」


婚約者の元へ一歩足を踏み出した辺見さんが、私の耳元に小さくささやいた。


「絶対に認めないから……!」


イラ立ちのこもった声が胸に深く突き刺さる。

一瞬見えた歪んだ表情と態度から、今も愁さんへの想いが辺見さんの中で色濃く残っている気がした。

そこまで彼を想うならなぜ、ほかの人と婚約したのだろう。


「気にしなくていい、沙和には関係ない話だから」


考え込む私のかたわらから愁さんの声が聞こえた。

ハッキリした物言いに疑問とともに現実に引き戻される。

暗に、私の知らないふたりの関係に線引きをされた気がして、混乱した想いが胸の中にせり上がっていく。


どうして、そんな突き放した言い方をするの? 


“本気”だと告げた愁さんの気持ちが、一気にわからなくなって心がみっともないくらいに揺れ動く。

同時に愁さんの言動に呆れるくらいショックを受けている自分に驚く。

さらに一方的に決められた“婚約者”という立場を、いつの間にか心の奥底で認めて大切に受け止めていた事実に気づく。

彼が口にする数々の甘い言葉を信じていなかったはずなのに、話半分な心持ちで受け取っていたはずなのに、私の心は彼に占拠されていた。
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