(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
愁さんは辺見さんに恋愛感情はなかったと話していたけれど、本当は長い付き合いの中で多少なりとも惹かれる部分があったのかもしれない。

心の機微に聡い人だし、私に婚約を申し込んだ手前、言い出せなかっただけで。

だからこそ“リハビリ”なんて口にしたのだろうか。

愁さんにもメリットが多少あるとはいえ、私の失恋への同情から発生したこの婚約関係はきっと、長く続かない。

気づいてしまった現実に、胸が張り裂けそうに痛む。

気を抜けば、視界がすぐに滲みそうになる。

こんな状態で愁さんのそばにはいられない。


「少し、人に酔ったみたいなので、お手洗いに行ってきます」


もっともらしい言い訳を口にして、愁さんの温かな手から逃れ歩きだす。

彼の呼び止める声が聞こえたけれど、聞こえなかったふりをして足を進めた。

広いお手洗いは幸いにも無人だった。

様々な感情を吐き出すように深く息を吐いたとき、ドアが開いた。


「こんなところで休んでいるなんてずいぶん余裕があるのね。そのドレスのせいかしら」


今、最も会いたくなかった辺見さんの姿と言葉に心が一層強く揺さぶられる。


「余裕なんてありません。あの……このドレスにはなにか意味があるのですか?」


「まさか、知らないの?」


私の反応に辺見さんは一瞬目を見開き、鋭い視線を向けながらも教えてくれた。
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