(2025改稿版)俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
金曜日の今日は、新たに立ち上げた提携ローンの運営方法を検討するため、午後から都内のローンセンターで打ち合わせをしていた。

定時をずいぶん過ぎ、問題点は後日再検討するはこびとなった。

帰社連絡を上司にしたところ、時間も遅いので機密書類はすべてローンセンターから社内書留メール便で送付して、手ぶらで直帰するよう指示を受けた。

後処理を済ませて地下鉄の駅に向かう途中、なにげなく斜め前の歩道に視線を向けたとき、ひと組の男女が反対方向から歩いてくる姿が視界に入った。

一定の距離感を保ちつつ、言葉を交わしているふたりに駅の改札口へと踏み出す足が無意識に止まる。

ドクンドクンと大きな音を立てて鼓動が忙しなく動き出す。


「……愁さんと、辺見さん……?」


思わず口から掠れた声がこぼれ落ちる。

胸がジクジクと膿んだように疼き、目の前の光景を見ていたくないのに、足が縫いつけられたように動かない。

ぼんやりと立ち尽くしたまま、斜め向かい側から近づく姿を見つめていた。

近づくにつれ判別できたふたりの表情はずいぶん硬かったけれど、お似合いだった。

手を繋いでいたり、親密に寄り添っているわけでもないのに、ただふたりきりで並んでいる姿にショックを受けてしまう。

それなのに、会えたことを喜ぶ私は本当に救いがたい。
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