自称ぽんこつ令嬢は今日も記憶をなくしたいのに、殿下の溺愛が止まりません。
 扉を勢いよく開けると、ちょうど王様が先ほどと同じクッキーを口にされる瞬間でした。

 匂いも全く同じそれは、傍目からは毒入りだということは分かりません。
 そして毒見役も気づかれなかったということは新種の遅延性の毒か、毒見役自体がこの件に関与しているかです。

「国王様」

 私は行儀など構うことなく、王様の腕に抱きつくように飛び込む。
 呆気に取られながらも、国王様は私を受け止め、代わりに持っていたクッキーを落としました。

 そしてリオン様が紅茶を手にしていた王妃様のカップを叩き落とす。
 パリンという大きな音が部屋に響き渡り、何が起きたのかと兵たちも部屋に入って来ました。

「これはどういうことだ、リオン」
「毒ですよ、父上。先ほどこれと同じものが僕たちの部屋に運ばれてきて、ディアナがすぐに毒だと気付いたのです。もし、父上たちにも同じものが振る舞われているといけないと思い、急ぎ参った次第です」
「無作法、申し訳ござません、国王陛下」

 国王様を見上げると、ややお顔が赤くなっております。もしかして、もう口にされてしまった後だったのでしょうか。

「あの……」

 大丈夫でしょうかと言いかけた時、後ろから抱え込むように国王様から引き離されました。
 振り返ると、眉間にやや皺を寄せたリオン様の顔があります。
 そうですね、いつまでも国王様に寄りかかるなど、失礼でしたね。

「すみません、リオン様」
「いや、いい」

 その声はやはりどこか不機嫌です。

「そなたのお陰か。全く、その能力は大したものだな」
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